五井先生の詩「百日紅が咲くとき」

今年の8月初め、大阪の長居公園を訪れました。百日紅さるすべりの木が、赤く美しい花を咲かせていました。
これまであまり百日紅の花をじっくりと見たことがなかったのですが、真夏の青空に映え、実に快く感じられ、「こんなに美しい花だったのか!」と感動しました。

百日紅と書くぐらいですから、赤のイメージしかなかったのですが、白いサルスベリもありました。
花だけでなく、青々とした緑も、つるつるの木肌も何もかも美しく感じられました。

五井先生の詩集「純白」に収録されている「百日紅が咲くとき」という詩を思い出しました。

百日紅さるすべりが咲くとき

百日紅が咲き夾竹桃が咲くと
原爆の日を想い出す
広島の人はみなこういって泣くと妻はいう
妻は被爆の中心地の人
知人や教え子たちの多くをその日に失ったかなしみに眼をうるます
生き死にはすべて神のみ手にあることを知ってはいても
死んでいった人をあわれみ生き残った自己に大きな責務を感ずる
一億否三十億否々あの世に送った人々の生命の重圧さえも
私は心の奥底から感じてくる
世界人類が平和でありますように……
永遠の平和をこの地に来らせ給え
私たちはこう祈らずにはいられない強い神のみ心を感ずる
ベトナムだけではない
イスラエルとアラブだけではない
地球上のあらゆる個所から動乱の匂いがする
私たちの祈りは世界平和の祈り
核爆発の被害を再びこの世界にもたらさぬように
大戦の惨禍を未然に防ぎ得るように
そして神のみ心の大調和世界をこの世に現わし得るように

祈り心で我が家の庭をみる
広島を想って植えた百日紅が
そして知人から貰った夾竹桃が
いずれも十数年前の美しい花を咲かせて
世界平和の祈りをしているのである

五井昌久詩集 純白(白光出版)

 五井先生の奥様は、広島のミッションスクールの英文科を卒業された後、一時、広島の女子校の英語の教師を務められました。その校舎は原爆によって壊滅し、300名以上の生徒が亡くなったそうです。
奥さまのご一家は、原爆投下の4,5日前に、みなではかって疎開して難を逃れられました。

 ちょうど、テレビのニュースで、広島、長崎への原爆投下のことがよく報道されている時期だったので、百日紅の花を見て「世界人類が平和でありますように。日本が平和でありますように。広島、長崎の天命が完うされますように」という祈りが心の底から湧き上がってきました。

 詩の中で、五井先生が「私たちの祈りは世界平和の祈り 核爆発の被害を再びこの世界にもたらさぬように」と書いておられます。
 心ある日本人であれば、誰しも、もう、このような苦しみを人類に二度と味わせてはいけない、と強く思わずにはいられないと思います。
 五井先生は、東西冷戦の時期、世界中のあらゆる紛争が、単にその地域だけの紛争に止まらず、第三次世界大戦、核戦争に発展しかねない危険性があると仰っていました。その危機を防いでいたのが、世界平和の祈りに働く、救世の大光明の絶大なる力であったことは間違いありません。
今またロシアがウクライナで核を使うのではないか、と懸念されています。実際にそんなことになったら、悲劇的な結果になります。
私達の日々の世界平和の祈りは、そのような悲劇が起きるのを防ぐ働きをしています。
 今の日本政府は、アメリカの核の傘によって、日本の安全と平和が守られていると、核抑止力を肯定した考えを持っています。
 永遠の平和というのは、武力によって、実現するものではありません。自分の国の安全と平和を守るために、武力を増強しなければいけないんだ、自分の国を守るために核兵器を持たなければいけないんだ、そういう考えで、人類は東西冷戦の時期、軍拡競争を繰り広げて、地球世界の運命を危うくさせていたことを忘れてはいけません。
 私たちは軍事力ではなく、神と一体となった真の祈りの力こそが、日本の安全を守り、世界を平和に導いていくことを多くの人に伝えていく責務があります。
 各国がいがみあい、憎しみあう業の波が、平和の祈りによって浄められてゆけば、核兵器が世界から廃絶され、真の平和が地上にもたらされる日が必ず来ると確信しています。

 詩の最後の「祈り心で我が家の庭をみる 広島を想って植えた百日紅が そして知人から貰った夾竹桃が いずれも十数年目の美しい花を咲かせて 世界平和の祈りをしているのである」というご文章が、深く心に染み入ります。
 夾竹桃は、広島復興のシンボルとなった花です。原爆が投下されたことで、75年は草木も生えないだろうと言われていた焼け野原に、いち早く咲いた花で、市民に希望と勇気を与えたとして、広島の市の花になっています。
 百日紅の花も、夾竹桃の花も、生命のままに咲いている。何の差しさわりもなく、生命の調和した美しさを奏でているわけで、その姿は祈りそのものです。いのちをそのまま現わすのが祈りです。
 祈りそのものの姿を現している美しい花々をみますと、どうか、人類も、こうした花のように、美しい生命の花を咲かせて、本心の神様の生命を光り輝かせて、誰もかれもが、みんな仲良く調和して暮らしている、真の平和な世界が一日も早く実現しますように、世界人類が平和でありますように、という祈りが自然に、心の中より湧いてまいります。